家族全員の闘いだ!
最後の晩餐じゃないが入院を控えた前日の夜、7人全員でイエローのコンパネを囲んで、何となく微妙な雰囲気の中で晩飯を食べていた。
するとタマキの携帯が鳴った!
「オオタニです!」との呼び掛けにタマキはスッと立ち上がって風呂場の方を向いた。
パチっと携帯を畳むと皆に「これがら、オオタニさん来っどや!」と語ると仏間のヒーターのスイッチを入れた。
まだ途中だった食事に手を付けると、間も無く
玄関の戸が開いて「こんばんは!」と声がした。
タマキは「早っ!」と言いながら箸を置いて口の中の物をゴクッと呑みこんでオオタニを迎えた。
「どうぞ!」と一言。
オオタニは促されるように上がると仏壇の前の低めの椅子に掛けて祈りを捧げた。
その後タマキに向いて「アシタがらだなっ!」と言った。
「ハイ!」というと。
「今日はみんなに話しがあっがら来た!」
タマキは「まだ晩飯過ぎでなぐで?」
と言うと「アッ。待ってるがらゆっくり食べでこいっ^_^」とオオタニ。
「じゃあッ!」と言って食卓に戻ると皆に伝えた。
タマキは晩飯を半端に口をゆすいで冷蔵庫の隣の柱にある鏡に向かって口の周りを確認すると仏間に向かった。
オオタニは椅子に座り仏壇に祈りを捧げていた。真後ろにタマキも正座して続いた。
5分位して、その後ろに全員が揃った。
タマキは立ち膝をして右手をオオタニの左肩にやり耳元で「揃いました!」と伝えた。
するとオオタニは椅子を軽く上げて尻を少し浮かすと、くるりと180度周り椅子に腰を下ろすと後方にいる皆に語り掛けた。
「突然お邪魔して!」と頭を下げながら一言発すると続けて「いよいよ明日がらねっ、タマキ君が入院になりますけども、これは家族全員の闘いなんですねっ。だがら皆んなでコゴロを合わせで行ぐごどが大事だど思って来たんです。」
「イノリさん!いいですか?」→「はい」
「お母さん!」→「はい」
「多美代さん」→「はい」
「龍一君」→「はい」
「伸一朗君」→「はい」
「幸美さん」→「ハイッ!」
オオタニの真ん前に陣取ったユキミの声はひと際元気に響いた。
一人一人の思いを確認すると最後にタマキに目を向けて黙って大きくうなずいた。
間髪を入れず「よしッ!」と両膝に手をやりパーンと叩くとそのまま立ち上がり「じゃあ宜しぐね^_^と言いながら全員の手を握り玄関を後にした。
皆で丁寧に見送り、戸が閉まって3秒経った時「ポロリン」とタマキの携帯が鳴った!
すぐさま携帯を開くと「オーーーッ!」と低めに唸った。
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