ジュクのシンちゃん!
「キターーーッ!」と叫ぶとタミーの腕を掴んでそのまま、おっかあ部屋に入ってタマキは「宿のシンちゃんがらメールた!」と報告した。
そもそも愛刀家がPのコミュニティに入った流れを遡ると、小川を挟んだ近所から嫁いだひいばあちゃん菊乃の娘のサダコが下川のセイキチロウと夫婦になり、二人は大田区馬込に在住した。
そのセイキチロウの鶴見に暮らす叔母が、近所で行われていた井戸端会議に野次馬のように覗き込むと、やけに活きのいい東京から来たシンイチと言う、真っ白な開襟シャツ姿にピシッと刈り上げられた七三分けが爽やかなイケメンに一瞬にして惚れ込んでPのコミュニティに参加した。というのがことの顛末だ。
タマキが生まれた時じいちゃんはいなかった。
イノリが高校生の時に亡くなったと聞かされていた。
なのでシンイチはタマキにとって思春期から青春時代そして48才のだんぽになるまでなんでも相談に気軽に乗ってくれる「じいちゃん」だった。
昭和一桁生まれ!
海苔漁師の三代目!
江戸っ子訛りが激しく「ひ」が発音出来ずに「ヒビ」が「シビ」になる!
その頃新宿に居を構えていたので、タマキにとっては「宿のシンちゃん」だった。
また妻の多美代のひいばあちゃんのミヨシノのセガレのタツゾウが、生まれ故郷のタラヤマダイを離れて茅ヶ崎で所帯を持っていた。
ある日、職場の秋田出身の同僚から、来週末上がり酒を!と誘われていた。
その日、酒好きのタツゾウはワクワクしながら仕事を終えた。
喉をカラカラにして向かった先は、やはり鶴見が現場の井戸端会議だった。
シンイチという青年の「辰蔵さん!^_^一緒に励まし合いながら生きていきませんか?!」との爽やかな問い掛けに思わずトーン低めに「オホッー!」と応えながら頷いたという。
っつて言うか、一刻も早く冷えたビールが恋しかっただけだった。
なのでタマキとタミーにとっては実の親戚以上に親しみがあった。事実、二人の披露宴に招いたが、出席は叶わず、お祝いに夫婦箸を頂いた。
また、夫婦関係に大きなシビが入り危機的な状況に陥った時にはタイムリーにも「栄光勝利山 愛刀夫婦城」と墨痕鮮やかに認められた短冊が届いた!
いつもはメールのやり取りだが、この度はタミーから言われた通りリアルの手紙に想いを込めてなんとか入院前に発送できた。
「レス早っ!」とタマキが言うと、タミーも覗き込んだ。
「お祈りをお送りします。伸一」
二人は息を呑んでガン見した。
「短っ!」タマキが発した。
すぐさま「気持ぢが届いだだげでもありがでぇ!どおもわねばダミダッ!」
「んだのォーーー」と言うとパチっと閉じてすぐさまプシュっと缶チューをあけた。
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